●トゥイーターには5㎝ソフトドーム型ユニットを搭載、ダンプ材にビスコロイド(ダンピングと密閉性が目的で多用されるが、経年変化で消失しエッジに穴が開いたりする)ではなくゴム系ダンプ材を使用。ドーム型を採用することで指向性が広く歪み感の少ない聴きやすい中高音に仕上げている。ネットワークは-6dbのウーファー用ハイカットフィルタと‐12dbのトゥイータ用ローカットフィルタで構成され、コイルはビクターオリジナルの硅素鋼板コアを使用し大入力時の低歪みを実現、25㎝ウーファーはエアサスペンション方式に耐えるため、西ドイツのクルトミューラー社製のKDUコーンが使用され響きの豊かなたっぷりした低音が特徴となっている。エンクロージャは前面バッフルと裏板がダグラスファー合板、側板はパーティクルボード、更に内部の響きを美しくするための響棒がリアバッフルに取り付けられている。しっかりした剛性と響きの美しさを実現したすぐれたエンクロージャである。吸音材には1KHz以下の吸音率がグラスウールの2~3倍というエステルウールが使用され低音のダンピング効果を高めている。
●エアサスペンション方式であるため、内容積33Lで13.3Kgというわりと小さい体からは想像できない豊かな低域再生能力を持っている。池田圭氏の音の夕映によるとSX-3の音決めについては、氏がクラングフィルムのオイロッパの音質に似るまで発売を阻止する程の圧力を掛けたそうだが、88dbという低能率では当時うまくドライブできるアンプは少なく鳴らしにくいスピーカーと言われていたように記憶している。かなりのパワーを入れると、低域をベースに安定した帯域バランスを持っていて、上品な再生音である。低域が一種独特の重みがあり、逆に中高域は透明で繊細な感じがすることでクラッシック向きであると思っている。
●1本\28000は今ではかなり安価であるが、当時はJBLのようなブランドと違って国産機としてはそれなりの価格であった。現在\2800であるが、状態の良いもので\4000が相場で\2000で即買いと勝手に値付け。外観のキズ、メタル、ターミナルやネジのサビの無いものはなかなか無いと思われるが、現代アンプなら楽々鳴らせるはずであり、池田氏が開発に加わりこだわりをもって創り出した製品でもある。相場も手頃なので、このあたりでこの名機を手に入れてみるもいいと思う。