JBL SG520

JBL_SG520 ~天才ロカンシーはアンプも名器~
 
<オークション:m69859360 JBL【SG520】Ends 3月4日11時25分>
 
– JBL SG520 –
 
●ヤフオクにて、JBLのあのSG520をみつけました。1964年にJBLが初めて発売したプリアンプで、1970年頃に\268,000で売られていました、超高級プリアンプですね。トランジスタがオーディオアンプに使われるようになったのは1960年代のことですが、トランジスタは当時、真空管に比べて音質評価の低いデバイスでした。そんなトランジスタアンプの悪評を覆したのがSG520プリアンプとSE400Sパワーアンプです。JBLのスピーカを上手く鳴らすために作られたものですが、発売早々に名器として評判になりました、なにをやっても流石はJBL、そんな感がありますね。
 さて、今回のSG520は一目見てそれと分かるデザインでしょ、グラフィックコントローラーとネーミングされていました。この斬新なデザインはパラゴンの設計者でもあるアーノルド・ウォルフの手によるものです。奇をてらったものではなく、セッティングポジションが一目で分かるというコンセプトでデザインされたそうです。ランシング亡き後、JBL社を引き継いだ社長のウィリアム・H・トーマス氏と、アーノルド氏のコンビは、スピーカーだけではなくアンプデザインにおいても抜群だったわけです。回路設計は天才エンジニアと謳われたバート・N・ロカンシー(1919年~1994年)です。JBL時代はアンプというより075やLE15A7などのスピーカユニットの設計で有名ですね、そのロカンシーなんです。
 彼は、JBL退職後にエド・メイとともにGAUSS社を創立し5831Fウーハなどの名品を生み出しました。ガウス社は、日本ではシャープと共同ブランドであるガウスオプトニカで知られていますが、現在はエレクトロボイスに買収されています。バートに関係のある日本メーカでもう一つ、1975年当時JBLの副社長であったバートを技術顧問に迎え入れて国産オーディオ技術の向上に努めた会社があります、パイオニアです。
 というわけでバートは晩年、パイオニアのエンジニア育成に力を注ぐことになりました。そして、レイ・オーディオの木下氏(元はパイオニアのエンジニア)など、優秀なエンジニアを輩出しました。パイオニアは彼の遺産というべき成果としてTAD(Technical Audio Devices)ブランドを立上げ、現在でも高い評価を得ています、本当にすごい人ですね。
 
●SG520はW396×H173×D337mm、回転型のツマミを一切使わず、ストレートライン型のコントロールとプッシュボタンスイッチだけで構成されたコントロールアンプで、初期型から後期型まで型番は変わっていませんが、内部の回路には変更されています。特に初期型はPNP型ゲルマニウム・トランジスタが使われており今でもファンが多いんです。スイッチを入れると突入電流でトランジスタを飛ばしてしまう恐れがあるので電源を入れっぱなしにしている人が多いとか、、、。二度と手に入らないデバイスですから気を使いますねぇ。
 フォノイコライザーはPNP3段構成、トーンコントロールを含むラインアンプは6段構成、うち4段がPNP型となっています。オシレーターもPNP型、電源には-21Vの負電源となっています。f特は公表値20~20KHzと狭帯域、出力3V、感度はPHONO 6mV、AUX 300mV、全高調波歪率0.15%と並レベルですが、音の方は素晴らしいです。スペックに頼ってもだめだという例ですね。トーンコントロールは高域20kHzで+21~-17dB、低域20Hzで±17dBをコントロール、ラウドネスコントロールもついています。
 変わった機能としてはANBS(オーラルヌルバランサ)を搭載していることで、これは1kHzのテストトーン発振器を内蔵しており、プリとパワーとスピーカをF22ステレオバランスパワーリレーという黒い箱につないでバランスコントロールができるようにするものです。フロントはアルミパネルですが、パワーアンプSE400Sの仕上げと合わせたゴールドパネルのSG520G(ゴールドモデルのG)や、電源電圧の切替えが可能なSE520E(エキスパートモデルのEらしい)などがあります。
●SG520は最初の10台が試作モデルでゴールド、シルバー、ブラック、ヘアラインデザインのものがあり、日本でこれを所有しているマニアもおられるとのこと、すごいですねぇ。音質は西海岸サウンドです、低域はぼやけてなく解像度があり高域までカラットして音像の輪郭がくっきりする感じです。SE400と繋いで、往年のJBLスピーカを鳴らすと最高なのでしょう。音の芯が太く迫力がありながら繊細な表現も出来るというわけで歴史に残る優秀アンプですが、古い音という表現が一番しっくり来ると思います。しかし、この古い音を聞くと新しい音がいいのだろうかと疑問に思ってしまうほど陶酔の音楽を奏でます。
●たまに見かける中古はやはり年代のためかなり痛んでおります。今回は状態が良いようですが、開始価格が\50と高額なため0BIDとなっています。\35万が相場、\18万で即買いと勝手に値付けいたしました、これでも当時の販売価格よりも高いですねえ。グラフィックコントローラー付きのJBL最初のプリアンプ、なかなか手に入らない名機です。
 
カテゴリー: オーディオ パーマリンク

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